食物アレルギー
食物アレルギーの治療には正確な診断が大切です。
明らかなエピソード(食べた直後に蕁麻疹やアナフィラキシーを起こしたなど)がある場合は原因がすぐにわかりますが、中にはゆっくり出る遅延型の反応であったり、血液検査で陰性であったりする事があり、すぐに原因だとわからないものもあります。
食物アレルギーの診断は意外に難しく、必要のないものが除去されていたり、除去しないといけないものが見逃されていたりします。
今までの経過や検査から原因を探りだしていきます。
多重感作と言って、多種類の食物にアレルギーがあるときは、もともと皮膚炎や乾燥肌があり、経皮感作(皮膚から抗原が侵入してアレルギーを起こす事)が原因になっている事があります。
そして皮膚がただれやすく痒みがあり、時に楕円形のガサガサした湿疹が出るなどのトラブルがある時は、腸内細菌叢(フローラ)のバランスが悪い事があります。
お腹が張ったり、臭いおならがでたり、下痢や便秘が繰り返されたりしていたら「腸」の働きを良くする治療も必要です。
食物アレルギーで腸の治療をする事があるのは以上のような理由からです。
保険診療
必要最低限の除去食指導をおこない、今までの経過や問診をもとに、必要な検査をします。
幼児の方には血液検査ではなく、プリックテストといって皮膚の上に抗原エキスを置いて針先で押すだけのテスト法もあります。
正確な診断をもとに必要最小限の除去食指導を行い、長期管理の計画を立てます。
0歳から15歳 経口負荷試験+食事指導(少しずつ食べて治す方法)
食物アレルギーが分かった場合でも、除去食は必要最低限にします。そのために医師の指導の下、外来で実際にアレルゲンを少量食べ、安全に食べられる量を確認します。これを経口負荷試験といいます。
アレルギーだからと完全除去ではなく、自宅でも安全に食べられる量を食べていきます。自宅での増量はせず、必ず外来で医師の監視のもと食べる量を決定するので安全です。
自費診療
緩徐経口免疫療法 16歳以上(少しずつ食べて治す方法)
外来負荷テストで確認した安全量を自宅で食べていきます。
自宅では増量せず次回外来受診のときに医師の監視のもと増量していきます。
安全ですが治療スピードはゆっくりです。軽症中症のアレルギーの方に適しています。
費用
1回:外来負荷検査+指導料 | 2,600円 |
エキス希釈液によるドロップ免疫療法 3歳以上
少しづつ食べる治療ができない方対象です。
食べ物から抽出したタンパクエキス(液体)をさらに何倍にも希釈して、飲み込んでも症状が出ない量をプリックテストの結果から判定し、実際に飲んでみて安全性を確かめます。
1日2回スポイドで何滴かのみこむことで免疫寛容(アレルギーを起こさないように働く力)を導きます。
少量摂取と併用することもあります。1~3か月ごとに一度の受診です。
エキスは自宅で2週間毎に作り替えます。
費用
初回 | 1食物:プリック検査+備品(キット)+指導料 | 30,000円 |
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追加食物:1項目につき検査料 | 20,000円 | |
エキス処方代金 1項目につき | 9,000円/ml | |
再診 | ドロップ増量負荷テスト | 5,000円 |
エキス処方代金 1項目につき | 9,000円/ml |
エキス希釈液による経真皮(皮内)免疫療法 5歳以上
少しづつ食べる治療ができない方対象です。
食べ物から抽出したタンパクエキス(液体)をさらに何倍にも希釈して、皮内テスト(ツベルクリンのように皮膚に注射します)で症状がでない量(皮膚が腫れず、全身の症状も出ない量)をきめて週に2回注射します。*
少量摂取と併用することもあります。週2回注射に来院が必要です。遠方の方は別の方法もありますのでご相談ください。エキスは当院で2週間毎に作り替えます。
費用
初回 | 1食物:プリック検査+皮内検査+指導料 | 50,000円 |
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追加食物 1項目につき検査料 | 25,000円 | |
再診 | 週2回皮内注射 1項目につき | 750円/回 |
追加1項目につき | 500円/回 |
* 皮内テスト法 2008年名張市立病院倫理委員会承認済み
特許公開番号:2019-112335
特許公開日 :令和1年7月11日
経真皮免疫療法における治療適量の判定方法及び判定キットの開発
患者さんの治療成績 治療経過
学会発表
第57回日本小児アレルギー学会学術大会
*重度のピーナッツアレルギーの小児患者における超低用量の抗原経口免疫療法の安全性
※学会発表を日本語へ翻訳、一部加筆(院長文責)
尚、クルミのアレルギーに対して数名の患者様がドロップ療法を開始されています。